腸内環境が免疫を左右するお話

知識

はじめに

「風邪になりにくい元気な体を作りたい」多くの人がそう思うでしょう。

肌の不調や怠さは、実は腸内環境を改善することで劇的に変わります。腸内環境は、人間の体の根幹にある健康の土台を作る礎です。この部分を整えることで、免疫以外にも体の不調を治すことができます。

 

体が資本

「体が資本」と言いますが、人間の健康を経済に例えると資本にするには元手になる資金が必要です。その資金を何処に投資し資産を増やす活動に例えると、健康は積立投資です。すぐに大きな利益は望めませんが、小さな事をしっかり積み立てていくと、年齢以上の若い体力や体を得ることができます。


筋トレや運動の習慣、睡眠も大切です。それに加えて、おすすめなのが腸内環境を整えることなのです。セットにすることでより元気で若々しい体を維持することができます。


人体の防御壁は4層

では、なぜ腸内環境を整えるべきなのか?そんな疑問を理解する前に、人間の体内に病気になる菌やウイルスも空気を吸っている限り、口や鼻から入ってきます。ですが、健康な人が簡単には体の不調になることはありません。


まずは、人間が病気にならないようにするための、体の防御機構に関して説明します。

 


第1の防御壁:手洗い、うがい

毎日の生活習慣で手洗いやうがいの防御壁は、人間の体の機構ではありませんが、体内免疫や栄養素並みの大きな働きを持っています。それは、手に付着したウイルスや細菌が体内に侵入することで、病気の発生原因になり得るからです。


ただ単に手についただけと思いがちですが、スマホを触った手でお菓子を食べたりしていませんか?それは、直接菌を食べ物と共にウイルスや菌を体内に入れていることになります。また、うがいをしないまま、ご飯を食べることは外気の汚れや菌・ウイルスと共に、飲み込んでいることになるのです。


これをほぼ0に近い数値まで減らすことができるのが、第1の防御壁である手洗いとうがいです。

この習慣をつけることで、体内への侵入を大幅にカットすることができます。

 


第2の防御壁:鼻粘膜・皮膚・胃酸

体内に入る際の防御壁になるのが、鼻粘膜や皮膚、胃酸になります。空気を呼吸する際の鼻粘膜は、人間の呼吸による空気の温度や湿度の調整だけではなく、異物があればくしゃみ等で体内の侵入を抑制する働きがあります。


人間の傷や衝撃から護る働きを加えると人間の表皮も同様の働きがあります。直接、多くの種類の菌やウイルス、化学物質に体内が触れないようにすることで、体を護っています。


胃酸は、食べ物の消化で大きな働きがありますが、強力な酸によって、細菌やウイルスを殺すといった大きな働きがあります。


第3の防御壁:ビタミンD3など栄養素

体内に入った菌やウイルスは、多くの活性酸素を生み出し、体内で増殖を始めます。それを防御する働きを持っているのが、ビタミンD3を含める栄養素になります。ビタミンD3は最近の研究で摂取量が一日目安量を超えているとインフルエンザの罹患率が低下すると示唆されており、現在注目されています。


また、ウイルスや細菌が出す活性酸素の除去する働きがある、ビタミンAやビタミンC、ポリフェノールと言ったビタミンも、免疫細胞の働きを上げる、活性酸素で傷ついた細胞の修復を良くすることが知られています。

 


第4の防御壁:腸内環境による「自然免疫」

人間の腸内は実は免疫細胞が多く定着していることが知られています。食べ物を食べてそのまま排出されるまでの間にも、生き残った細菌やウイルスが増殖し、体内への侵入へ備えて、免疫細胞が密集しているのです。白血球はもちろん、キラーT細胞やマクロファージ、といった多く種類の細胞が密集しています。加えて、免疫細胞が外界のウイルスや細菌と戦い獲得免疫を作る部位であるパイエル板という部位があります。


こうして、パイエル板で獲得免疫を作った免疫細胞が体中の血流に乗って体内に行き渡ることで、人間の体の抵抗力があがり、必然的に風邪を引きにくい体にすることができます。



腸内環境を整えることの重要性

腸内環境

腸内環境を整えることは、3つの側面を意識する必要があります。

  1. 腸内細菌の割合で善玉菌の数を悪玉菌よりも増やす
  2. 活性酸素や過酸化脂質の数を減らす
  3. 腸管の蠕動運動を刺激する

この3つが重要です。勘違いしがちなのは、1つや2つを行うがそれ以外やらないのがNGなんです。3つセットで初めて良い腸内環境を整えることができるので、セットで取り組むことが重要です。


腸内細菌ってどのぐらいいるの?

腸内には、数百種類の菌と腸全体で100兆個細菌います。その中で、善玉菌、日和見菌、悪玉菌といった3種類の菌類がいます。この中で善玉菌人間の腸管内で、必要なビタミンの合成、活性酸素の除去といった働きをしています。

悪玉菌は逆に活性酸素や過酸化脂質を作り出すため、多くなると腸管の環境を悪くするため、悪玉菌と呼ばれています。


問題は日和見菌、この菌は善玉菌と悪玉菌の割合によって働く役割が変わります。多い方の働きを加算させるという働きを持ちます。腸内環境を良くするには、善玉菌を多く増やし、この日和見菌を味方につけることが大切なのです。


大腸菌は、重さに換算すると1g当たり1000万個から1000億の菌がいます。これは、腸内でも酸素が比較的ある小腸と無い大腸では菌の種類が異なるためです。人間の腸内には小腸に定着しやすい菌、大腸に多い菌と言った部位によって腸内細菌の種類が異なります。


最近、特定の種類の善玉菌が多い人は、免疫細胞で攻撃対象の調整に関わる制御性T細胞を呼ばれる細胞の働きを良くするという研究結果も出ています。この制御性T細胞は、免疫細胞の中で攻撃力が高いだけではなくて、攻撃対象も調整するので、アレルギーといった症状にも関わっていることがわかりました。


そのため、様々な菌を普段の食事から摂取して、腸内環境の中で多くの種類の善玉菌の数を増やすことが腸内環境を整える重要なことなのです。

腸内細菌

 

どうやって腸内環境を鍛えるべきか

  1. 発酵食品を食べる!
  2. 食物繊維を食べる!
  3. 脂肪やたんぱく質のとり過ぎをやめる!

発酵食品を食べることは体内に善玉菌を摂取すると同時に、その菌が増える餌になる食物繊維や短鎖脂肪酸を摂取することができます。ヨーグルトやチーズには短鎖脂肪酸が豊富で、納豆や漬物には食物繊維が豊富です。甘酒やミソにも含まれています。


食物繊維を食べることは、善玉菌の餌になるだけではなくて、腸内の蠕動運動を促進させる働きがあります。食物繊維には2種類があって、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維があります。

水溶性は主に海藻に不溶性食物繊維は根菜に多く含まれています。それぞれ腸管内で役割がことなり、水溶性食物繊維は腸管内の善玉菌が増える際の餌になります。不溶性食物繊維には、腸管内側から刺激を与えて、便が小腸から大腸へ進むために必要な筋肉の運動の刺激と、腸壁にへばりついた汚れを取る働きがあります。


脂肪やタンパク質のとりすぎは腸管内で悪玉菌の餌になります。また、発生した過酸化酸素によって過酸化脂質の材料となります。人間の体のエネルギーに必要な栄養素であるもののとりすぎは基本NGなので、量を守って取り過ぎを避けるだけで十分です。



腸活が体を守ってくれる

腸活をすることで腸内細菌が必要な栄養素を作り出し免疫細胞の働きを良くし、細菌やウイルスと言った強い体を作るだけではなく、アレルギー等の暴走も制御する力を持っています。


老廃物の排出だけではなくて、風邪をひきにくく元気な体の土台を作る上でも発酵食品を食べる!食物繊維を食べる!脂肪やたんぱく質のとり過ぎをやめる!を心がけることが重要です。